アウェイ

金曜―


早朝、電車の中で、革靴をうっかり忘れたことに気づく。
「まあ、むこうで安いやつを買ったらいいわ」
と、不動心を貫く。
ここで動揺したら、負けや。
しかし、これが悪夢の始まりに。



車内、何人か若いスーツの人を見ると
「ははーん、さてはこの人も同じ試験を受けるライバルだな」
と、勝手に警戒。
戦いは、もう、始まっているのだ。
気を抜けば、寝首をかかれるけえの。




中国山地にさしかかる頃、トンネルを一つ越えるたびに積雪量がじわじわと増えていく。
こりゃ現地に着いたらどうなっちまうんだろうとハラハラするも、現地はそれほどでもなくまずは一安心。

しかし、だ。
なんにもないぞこの町は、どうなっとるんや。
コンビニが、ない。
民放が3つしか、ない。
遊べるところが、ない。
メインストリートが、2、3車線。
どこを歩いても、シャッター街
道行く4人に3人が、お年より。






ホテルを探すのも、食事をするにも、とにかく一苦労。
いわんや、靴屋をや、である。


結局、はるか離れた郊外の量販店で購入。



当初予定していた城跡の散策や、博物館をじっくりみてまわることもできず。
なんとか閉館間際に滑り込んだものの、時間なく早足で見てまわる。

この日の歩行時間、約5時間。歩行距離にして20キロ。
足がキッツイ。腰が痛む。




コンディション最悪のまま10時過ぎに就寝。




そして迎えましたるは今日、土曜日―


30分前に会場に到着。
早速何人受けに来ているかを確認。
読みどおり、応募者は20人。うち2人欠席か。いいぞいいぞ。




そしていざ試験。
これが、とんでもない曲者。
超ドローカルネタと、そこの博物館ネタがやたらある。
くそがっ、もっとしっかり見とくんだった。
つうか、こんな問題地元の人しか知らんやろ!むしろ地元すら知らんやろ!
当然、それ系の問題はわかりっこない。


全体でみれば6割前後やろうけど、印象悪いやろなあ。



試験終了後、逃げるように会場を後にする。


やっちまったなあ。



帰りの電車で。
そういえば町行く人は、みんな親切でいい人やったなあって。


なんにしても疲れた、ねぇ。