転記そして転機

パソコンの中にある「図書台帳」なるものを、手書きの台帳から転記するという業務を、日々粛々と行っております。
書名、作者名、出版社、価格、ISBN番号と、1冊につき5項目。
そのジャンルたるや小難しげな学術書からオカルトからビジネス本、絵本やら料理本やら実に多岐にわたっているわけです。
で、その中には、ごくまれに自分が知ってる本もあったりして。


「あ、これ小学校んときに借りたことある」


この瞬間は、ちょっとした幸せです。
その時ばかりは仕事のことなどしばし忘れ、しみじみ当時に思いをめぐらすのです。あの頃は・・とかって。




「てぶくろを買いに」「ほしのおうじさま」「なぜなぜ事典」・・・枚挙にいとまがありません。
なんせもう2400冊以上入力しとるんで。



中でもひときわグッときたのが「きいろいばけつ」(あかね書房)。奥さんご存知?



小2のとき、あの、と言ってもご存知ないでしょうが、ワールドクラスのドけちな母親が後にも先にも唯一誕生日に買ってくれたのが、この本だったのであります。
当時、(今は知らぬのでこう記す)低学年向けの課題図書に指定されていました。
しかし!です。正直内容はほとんど憶えておりませぬ。なんじゃそりゃ。




「きつねくん(名前あったかも)が主人公でね、くまくん(あおいばけつ所有)とうさぎちゃん(あかいばけつ所有)が出てきてね・・・
きつねくんが偶然見つけたきいろいばけつが一週間たってもここにあったら自分のものにしようなんて言ってね・・・」


なんか、そんなような展開。
読んだあと、すんごい優しい気持ちになれたのを憶えております。






それ以上に、あのドけちなおっ母ぁがよう買ってくれたなあと、ただそればかり憶えているのです。






それ以来、実家を離れるまで自分の机の本棚の片隅にそっと立ててあった「きいろいばけつ」。




今ごろはどこでどうしているかしらん。